資産除去債務とは?具体的な計算方法や仕訳について解説

資産除去債務とは?具体的な計算方法や仕訳について解説

こんにちは。「KIMERA」コンサルティングチームの花田です。

資産除去債務とは、建物などの有形固定資産の取得に伴い、将来建物を解体・撤去するときに見込まれる費用を見積もって計上する負債のことです。資産除去債務の会計基準は、有形固定資産を除去するための将来の負担を財務諸表に反映させることが投資情報のために役立つと考えられたことから導入されたものです。この記事では、資産除去債務の概要や会計基準、実務における具体的な計算方法や仕訳について解説します。

1.資産除去債務会計基準導入の背景

資産除去債務の考え方は、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」(以下「資産除去債務会計基準」)および企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」(以下「資産除去債務適用指針」)で定められています。

この制度が導入される前は、電力業界の原子力発電施設の解体費用を発電実績に応じて引当金を計上する特定の事例はありましたが、国際的な会計基準で見られるような資産除去債務を負債として計上し、これに対応する除去費用を有形固定資産に計上する会計処理は行われていませんでした。

このような背景から、日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)との差を縮小することを目的に、有形固定資産を除去するための将来の負担を財務諸表に反映させることが投資情報のために役立つと考えられたことから、資産除去債務会計基準が導入されています。

2. 資産除去債務会計基準とは

資産除去債務とは、ひと言でいうと、建物などの有形固定資産の取得に伴い、将来建物を解体・撤去するときに見込まれる費用を見積もって計上する負債のことです。

資産除去債務の概要と会計処理の理解のため、資産除去債務会計基準の内容を解説します。

(1)資産除去債務とは(3項)

「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該資産を除去することが法律などで定められているものをいいます。これには、有形固定資産の除去そのものは必要でなくとも、有形固定資産を除去する際に、有形固定資産に使用されている有害物質を除去するための費用も含まれます。

また、有形固定資産の「除去」とは、有形固定資産を用役提供から除外することをいい、具体例としては、売却、廃棄、リサイクルなどによる処分が含まれています。ただし、一時的に除外する場合や、転用や用途変更、さらには当該資産が遊休状態(資産としてその場にあるが長期間使用されていない状態)になる場合は、除去に含めることはできません。

賃貸物件を解約する際に請求される部屋の原状回復費用と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。他には、工場建設における土壌汚染やアスベストの除去費用なども該当します。

(2)資産除去債務の負債計上(4~5項)

資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって発生した時点で負債に計上します(4項)。ただし、資産除去債務の発生時に当該債務の金額を合理的に見積もることができない場合は、資産除去債務の計上はできないため注意が必要です(5項)。

(3)資産除去債務の算定(6項)

資産除去債務を認識したときには、有形固定資産の除去に要する費用(割引前の将来キャッシュ・フロー)を見積もり、その費用の現時点の価値(割引後の金額(割引価値))で算定します。 

割引前の将来キャッシュ・フローは、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づく自己の支出見積りによるとされています。具体的には、有形固定資産を除去するために直接必要な作業や、処分に至るまでの保管や管理のために必要な費用も含まれます。

(4)資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分(7・9項)

資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債に計上した時にその同額を関連する有形固定資産の帳簿価額に加算します。その後、資産計上された資産除去債務に対応する除去費用は、減価償却費として耐用年数に応じて各期の費用として計上します(7項)。 

また、時の経過による資産除去債務の調整額は、その発生時の費用として処理することになっており、その調整額は期首の負債の帳簿価額に当初負債計上時の割引率を乗じて算定するとされています(9項)。

(5)開示(12~15項)

①貸借対照表の表示

貸借対照表における資産除去債務は、固定負債の区分に資産除去債務等の適切な科目名で表示するとされています。ただし、資産除去債務を認識した日から1年以内に資産除去債務の履行が見込まれる場合には、流動負債の区分に表示します(12項)。

②損益計算書の表示

損益計算書では、資産計上された資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額は、損益計算書上、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上するとされています(13項)。

これは資産除去債務に関連する有形固定遺産の減価償却費が、販売費及び一般管理費に計上されている場合は、除去費用にかかる費用配分額も販売費及び一般管理費に計上されるということを意味しています。

また、時の経過による資産除去債務の調整額(利息費用)は、損益計算書上、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分(販売費及び一般管理費)に含めて計上するとされています(14項)。

時の経過による資産除去債務の調整額は、資産除去債務の履行に関する資金調達費用と見ることができ、財務費用として営業外費用に含めるべきという見方もありますが、時の経過による資産除去債務の調整額は、実際の資金調達活動による費用ではないことから、資産除去債務にかかる費用は、有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上するのが適切とされています。

最後に、資産除去債務の履行時に認識される資産除去債務残高と資産除去債務の決済のために実際に支払われた額との差額(履行差額)は、損益計算書上、原則として、当該資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額と同じ区分(営業外費用)に含めて計上するとされています(15項)。

ここまでの説明を表にすると以下のとおりです。

資産除去債務の項目と表示区分
資産除去債務の項目表示区分
資産除去債務1年超固定負債
1年以内流動負債
減価償却費通常の有形固定資産販売費及び一般管理費
利息費用
履行差額投資不動産営業外費用

3. 資産除去債務の具体的な仕訳例

では、以下の前提条件に従い、資産除去債務の具体的な仕訳例について解説します。

(1) 原則法

【前提条件】

  • 有形固定資産の取得価額:10,000(耐用年数5年:定額法)
  • 資産の除去費用見積もり:1,000(業者の見積もりを取得し合理的に見積もれるものとする)
  • 割引率:3%
  • 資産の除去費用実績:1,050(耐用年数の5年経過後に撤去するものとする)

①有形固定資産購入時(資産除去債務の計上)

前提条件より、有形固定資産購入時の仕訳は以下のとおりです。

資産除去債務は、将来資産を除去するために5年後に1,000の費用がかかると見積もられた場合に、5年後の1,000に対する現在の価値を見積もって計上するものです。その現在の価値を見積もる際の指標が割引率の3%となり、割引率の計算式は、1,000÷(1.03)⁵となります。

なお、資産除去債務は対象となる有形固定資産の取得価額に含めることとされています。

借方金額貸方金額備考
有形固定資産10,863現金10,000


資産除去債務8631,000÷(1.03)⁵

②決算時(減価償却費と利息費用の計上)

続いて、1年目の決算時の会計処理です。前提条件より、減価償却費と利息費用計上時の仕訳は以下のとおりです。
減価償却費は、取得価額10,863を耐用年数5年で償却するため、計算式は10,863÷5となります。
利息費用は、資産除去債務が時間の経過とともに増加する利息となり、計算式は863×3%です。

借方金額貸方金額備考
減価償却費2,173減価償却累計額2,17310,863÷5
利息費用26資産除去債務26863×3%

同様に、2年目の決算時の会計処理は以下のとおりです。

借方金額貸方金額備考
減価償却費2,173減価償却累計額2,17310,863÷5
利息費用27資産除去債務27(863+26)×3%

この調子で有形固定資産の耐用年数である5年目の決算時を迎えたときの累計は以下のとおりです。


計上時1年目2年目3年目4年目5年目
資産除去債務の累計額8638899169439711,000
利息費用262727282930

③有形固定資産を除去した時

最後に有形固定資産を除去したときの仕訳を解説します。

まずは有形固定資産の除去として、各年の決算時に計上した減価償却累計額を借方に、除却した有形固定資産を貸方に計上します。

さらに、有形固定資産の撤去費用を1,000と見込み資産除去債務を計上していたところ、前提条件より有形固定資産の撤去費用実績として1,050かかったため、実際に支払う金額と50の差額が発生します。

この差額は、「履行差額」として費用(実際に支払う金額が少ない場合は収益)に計上します。

借方金額貸方金額備考
減価償却累計額10,000有形固定資産10,000有形固定資産の除却
資産除去債務1,000現金1,050資産除去債務取崩し
履行差額50

取崩額に対する差額(費用)

(2) 簡便法

資産除去債務の原則的な処理は、前項のとおり資産と負債の両建処理ですが、賃貸借契約の敷金については、以下のとおり簡便法による処理が認められています。

【前提条件】

  • 敷金の支払:200,000(賃貸借期間5年間)
  • 原状回復費用見積もり:100,000(平均的な入居期間等から合理的に見積もれるものとする)
  • 退去時の原状回復費用実績:80,000

①賃貸借契約締結時(敷金の計上)

前提条件より、賃貸借契約締結時に支払った敷金の仕訳は以下のとおりです。原則法と違い簡単です。

借方金額貸方金額備考
敷金200,000現金200,000

②決算時(敷金の償却)

続いて、1年目の決算時の仕訳です。

前提条件より、原状回復費用100,000を賃貸借期間である5年間で按分し計上します。
2年目以降も同じ仕訳を5年間繰り返します。

借方金額貸方金額備考
敷金償却20,000敷金20,000100,000÷5

2年目以降5年目まで同じ仕訳を繰り返すと、5年後の累計は以下のとおりになります。

借方金額貸方金額備考
敷金償却100,000敷金100,000原状回復費用見積額と一致

③賃貸借契約終了時

5年間の賃貸借期間が終了したときの仕訳は以下のとおりです。

前提条件より、退去時には敷金200,000から原状回復費用80,000を差し引いた金額120,000が返還されます。賃貸借期間は5年間のため、敷金償却は100,000となり、敷金の残高は100,000です。返還された金額120,000と敷金の残高100,000の差額20,000は履行差額として計上します。

借方金額貸方金額備考
現金120,000敷金100,000敷金の残高は200,000から敷金償却100,000を引いた値


履行差額20,000貸方の履行差額は収益

(3) 敷金償却は簡便法を適用する理由

賃貸借契約に伴い敷金を支出した場合は、なぜ簡便法が適用されるのでしょうか。

その理由は、敷金と資産除去債務を資産に繰り入れることによる資産の二重計上を防止するためです。賃貸借契約時に支出した敷金は、賃貸借契約が終了し退去するときには、敷金から原状回復費用を差し引いた金額で返還されることになります。そのため、資産除去債務の計上は行わず、決算時に敷金償却という形で直接敷金から償却を行うことになります。

このような理由から、敷金支出による資産除去債務は簡便法適用が認められています。

4. 複雑な仕訳方法を毎回調べなくてもよくなる方法

資産除去債務の仕訳に限らず、多くの会計基準が制定され、また改訂を繰り返しています。これらの仕訳をすべて理解し頭に入れることは実質困難です。このような場合は現在利用している会計システムに仕訳を登録したり、クラウドの会計サービスを活用したりすることで解消することができます。仕訳の方法がわからない、基準が変わりどのように対応していいかわからないといった悩みも解決することができるため、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

5. まとめ

◆資産除去債務とは、建物などの有形固定資産の取得に伴い、将来建物を解体・撤去するときに見込まれる費用を見積もって計上する負債のことです。有形固定資産を除去するときの費用の例としては、賃貸物件を解約する際に請求される部屋の原状回復費用があります。

◆資産除去債務の考え方は、日本の会計基準と国際財務報告基準(IFRS)との差を縮小することを目的に、有形固定資産を除去するための将来の負担を財務諸表に反映させることは適切な投資情報として役立つと考えられたことから導入され、現在に至っています。

◆資産除去債務の仕訳には原則法と簡便法の2つがあります。原則法は、資産除去債務を有形固定資産に含めて耐用年数をかけて減価償却費で期間配分を行います。一方簡便法は、賃貸借契約の敷金で用いられますが、資産除去債務を敷金から直接減額することが認められています。

◆資産除去債務の仕訳に限らず、多くの会計基準が制定され、また改訂を繰り返しています。これらの仕訳をすべて理解し頭に入れることは実質困難です。このような場合は現在利用している会計システムに仕訳を登録したり、クラウドの会計サービスを活用したりすることで解消することができるため、一度チェックしてみることをおすすめします。

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