収益認識に関する注記とは?基礎から解説!中小企業で使える記載例もご紹介

収益認識に関する注記とは?基礎から解説!中小企業で使える記載例もご紹介

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

2021年から新収益認識基準が導入されたことに伴い、中小企業の計算書類の記載項目が追加になりました。この記事では中小企業が計算書類を作成する際に留意するべきポイントをわかりやすく解説するとともに、記載例を紹介します。

新収益認識基準と計算書類

収益認識に関する会計基準と同適用指針が、2021年4月以降開始する事業年度から適用されています。上場企業では有価証券報告書の開示にあたって新収益認識基準への対応が求められますが、中小企業においても対応が必要になる場合があります。

中小企業が計算関係書類を作成するに当たって拠るべき指針に「中小企業の会計に関する指針」があります。これは新収益認識基準の導入に伴って2021年8月に改正版が公表され、各計算書類の注記項目に「会計上の見積りに関する注記」及び「収益認識に関する注記」が追加されました。

また、経団連は会社法による各種書類のひな型を公表しており、個別注記表のひな型も収益認識基準に対応して改正されています。

参照:
中小企業の会計に関する指針作成検討委員会
改正「中小企業の会計に関する指針」

一般社団法人 日本経済団体連合会
「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」

「計算書類」と「個別注記表」の基礎

計算書類とは

ここで、決算業務などでよく耳にする「計算書類」の基本と背景をおさえておきましょう。

会社法では、株主資本等変動計算書と個別注記表については「貸借対照表、損益計算書そのほか株式会社の財産および損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの」と規定されているだけです。

この規定の中「法務省令」はここでは「会社計算規則」と呼ばれるものです。その第59条第1項に「法第435条第2項 に規定する法務省令で定めるものは、この編の規定にしたがい作成される株主資本等変動計算書および個別注記表とする。」と書かれています。つまり、株式会社は貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記を作成すべきなのです。

注記とは

注記とは、決算書に記載されている事項の前提情報や参考になる内容を補足するものです。

個別注記表はそれらを一覧にしたもので、重要な会計方針に関わる注記、貸借対照表に関わる注記、損益計算書に関わる注記など、それぞれの計算書類に記載されていた事項をまとめて記しています。

会社計算規則では、「重要な会計方針に係る事項に関する注記」などの項目に区分して、個別注記表を表示するよう要求されています。また重要な会計方針以外でも会社の財産または損益の状態を正確に判断するために必要な事項は注記しなければならない、と定められています。

なお、個別注記表に記載が必要な事項は、同じ株式会社であっても公開会社であるか否かによって異なります。

また、非上場企業で会計監査人設置会社以外の株式会社・会計監査人設置会社以外の上場企業の個別注記表については、注記を要しない項目が規定されています。まずは自社で必要な対応、追加するべき注記は何かを確認しておきましょう。

出典:平成十七年法律第八十六号 会社法
平成十八年法務省令第十三号 会社計算規則

新収益認識基準に対応する注記

新収益認識基準に基づく会計処理を行っている企業においては、計算書類の注記において、①重要な会計方針の注記と②収益認識基準に関する注記の記載が必要になりました。ここからはこれらの項目について詳しく解説していきます。

  1. 重要な会計方針の注記 収益認識基準 第80-2項、3項
    1. 企業の主要な事業における主な履行義務の内容
    2. 企業が履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
    3. ①②以外に重要な会計方針に含まれると判断した内容
  2. 収益認識に関する注記 収益認識基準第80-4~24項
    1. 収益の分解情報
    2. 収益を理解するための基礎となる情報
      1. 契約及び履行義務に関する情報(ステップ1及びステップ2)
      2. ⅱ取引価格の算定に関する情報ステップ3
      3. ⅲ地溝義務の配分額の算定に関する情報(ステップ4)
      4. ⅳ履行義務の充足時点に関する情報ステップ5
      5. ⅴ本会計基準の適用における重要な判断
  3. 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報
    1. 契約資産および契約負債の残高など
    2. 残存履行義務に配分した取引価格

重要な会計方針の注記

重要な会計方針の注記とは?

「重要な会計方針」の注記の欄では、現在、どの会計基準を採用しているかを明記します。棚卸資産の評価方法が移動平均法なのか、固定資産の減価償却方法、引当金の計上基準などは多くの企業で記載されている代表的な項目です。

新収益認識基準( 企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針 第 30 号「収益認識に関する会計基準の適用指針」)を適用する会社については、下記の3つの項目を漏れなく記載する必要があります。

① 企業の主要な事業における主な履行義務の内容
② 企業が履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
③ ①②以外に重要な会計方針に含まれると判断した内容
(会社計算規則第 101 条第 2 項)。

まず、①その企業における履行義務がどんなものなのか、サービスの提供なのか?物品の引き渡しなのか?を説明します。そして②収益を認識する時点について、納品基準・研修基準などを明記します。下記のような文言で記載している企業が多いようです。

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<記載例>

収益及び費用の計上基準

商品又は製品の販売に係る収益は、主に卸売又は製造等による販売であり、顧客との販売契約に基づいて商品又は製品を引き渡す履行義務を負っております。当該履行義務は、商品又は製品を引き渡す一時点において、顧客が当該商品又は製品に対する支配を獲得して充足されると判断し、引渡時点で収益を認識しております。

保守サービスに係る収益は、主に商品又は製品の保守であり、顧客との保守契約に基づいて保守サービスを提供する履行義務を負っております。当該保守契約は、一定の期間にわたり履行義務を充足する取引であり、履行義務の充足の進捗度に応じて収益を認識しております。

当社が代理人として商品の販売に関与している場合には、純額で収益を認識しております。

出荷基準を適用する場合の注意点

なお、②の「履行義務を充足する通常の時点」と「収益を認識する通常の時点」は通常、同時点になりますが、出荷基準等に関する代替的な取扱いを適用している場合は異なります。(収益認識適用指針第98項)

新基準では、国内における商品または製品の販売であり、出荷時から当該商品・製品の支配が顧客に移転されるときまでの期間が通常の期間である場合は出荷基準を適用することができます。

この通常の期間とは、取引慣行ごとに合理的と考えられる日数を指しており、国内の配送であれば数日間程度の取引が多いとされています。

この場合には注記には「収益を認識する通常の時点」を記載するよう定められている点に留意が必要です(収益認識基準第163項)。

その他の情報についての注記

①履行義務の内容、②履行義務の充足時点以外にも、取引価格の算定に関する情報や、履行義務への配分額の算定に関する情報など、重要な会計方針に含まれると判断した情報がある場合にはこの項で明示します。その場合、下記のような文言を追加しましょう。

[重要な会計方針に含まれると判断したものを記載する例]

当社の取引に関する支払条件は、通常、短期のうちに支払期日が到来し、契約に重要な金融要素は含まれておりません。取引価格は、変動対価、変動対価の見積りの制限、契約における重要な金融要素、現金以外の対価などを考慮して算定しております。取引価格のそれぞれの履行義務に対する配分は、独立販売価格の比率に基づいて行っており、また、独立販売価格を直接観察できない場合には、独立販売価格を見積っております。

会計方針の変更に関する注記

また、会計方針を変更した場合はその旨も注記が必要です。当年度に新収益認識基準を始めて適用した、またはその影響を受ける取引が初めて発生した、という場合は忘れずに記載しましょう。会計方針の変更について記載する場合の代表的な文言は次のようになります。

<記載例>

会計方針の変更に関する注記

(2)○○○に関する会計基準の適用

当事業年度より、「○○○に関する会計基準」を適用しております。当該会計基準は遡及適用され、会計方針の変更の累積的影響額は当事業年度の期首の純資産の帳簿価額に反映されております。この結果、株主資本等変動計算書の利益剰余金の遡及適用後の期首残高は×××百万円増加しております。

会計方針の変更を行った場合は、会計基準の変更による影響額を記載する必要がある点に留意しましょう。

収益認識に関する注記(会社計算規則第115条の2)

「収益認識に関する注記」として、重要性の乏しいものを除き、以下の3項目について、各社の実情において必要に応じて記載するよう求められています。

① 当該事業年度に認識した収益を、収益およびキャッシュ・フローの性質、金額、時期および不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づいて区分をした場合における当該区分ごとの収益の額その他の事項
② 収益を理解するための基礎となる情報
③ 当該事業年度および翌事業年度以降の収益の金額を理解するための情報

ただし、重要な会計方針として注記している内容は、収益認識に関する注記として記載しないことができるとされているため(会計基準80-8項)、注記を省略している事例も多いようです。

ここでは、「重要な会計方針」の項目で収益認識について記載し、「収益認識に関する注記」においては省略する場合の記載例を紹介します。

<記載例>

(1)収益の分解

当社は、○○事業、○○事業及びその他の事業を営んでおり、各事業の主な財又はサービスの種類は、△商品、△製品及び△保守サービスであります。また、各事業の売上高は、×××百万円、×××百万円及び×××百万円であります。

(2)収益を理解するための基礎となる情報

「重要な会計方針に係る事項に関する注記」の「収益及び費用の計上基準」に記載のとおりであります。

なお、③ 当該事業年度及び翌事業年度以降の収益の金額を理解するための情報については、履行義務の充足とキャッシュ・フローの関係を理解できるようにするという目的があります。そのため、必要であれば「契約資産及び契約負債の残高等」について記載します。

また、既存の契約から翌期以降に認識することが見込まれる収益の金額及び時期について明らかにするため「残存履行義務に配分した取引価格」について記載します。

なお、重要性の乏しいものは記載を省略することができるため、記載するかどうかをあらかじめ確認しておくことをおすすめします。記載内容については各社の実情を踏まえた合理的な判断が必要になるため、記載事項については事前に詳細を明確にしておくと、決算業務を円滑に進めることができます。

注意点

主要な履行義務の内容、充足時期は、企業特有の内容を反映して具体的に説明する必要があります。特にサービスの提供や一定の期間にわたり充足する履行義務はさまざまな形の契約が存在するため、詳細かつ明確な説明が求められます。

また、取引価格や収益認識時点についても、財務諸表利用者の将来予測に資する詳細さで情報を提供することが必要になります。重要性とのバランスをとったうえで、必要な情報は何なのかをよくすり合わせ、整理しておくことがポイントになります。

まとめ

個別注記表は、会社の現在の状況をわかりやすく示すために重要な役割を果たします。新収益認識基準は比較的新しい会計基準のため、まだ記載例やケーススタディが十分に蓄積されているとはいえない状態ですが、監査法人や税理士などと相談し、同業種の開示例を参考にするなどしながら、自社の状況を的確に提示できる計算書類を作成しましょう。

決算書類を効率よく作成するためには、漏れ・ミスなくデータ収集や集計を行い、作業を具体的にイメージしながら準備しておくことが重要になってきます。

日常業務の自動化や決算データの収集・集計に役立つシステムやクラウドサービスの導入をも視野に入れて、円滑な作業を進められる体制を日ごろから作っておくことをお勧めします。決算業務は一時期に集中するため、経理担当者には大きな負担となります。日ごろから業務をできるだけ自動化し、業務効率を向上させておくことが円滑な決算作業に直結します。

参考:
日本公認会計士協会 「Q&A 収益認識の開示に関する基本論点」
日本公認会計士協会「Q&A 収益認識の基本論点(追補版)」
国税庁「収益認識に関する会計基準」への対応について

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