ライセンス契約におけるアクセス権と使用権とは?ソフトウェア開発やサブスクビジネスに与える影響を解説

ライセンス契約におけるアクセス権と使用権とは?ソフトウェア開発やサブスクビジネスに与える影響を解説

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

「ライセンス契約におけるアクセス権と使用権はどう違う?」「新収益認識基準の導入は、ソフトウェア開発やサブスクビジネスにどのような影響があるのだろう?」

そのように考えている方もいらっしゃるかと思います。

この記事では、新収益認識基準の概要とライセンス契約におけるアクセス権と使用権の内容及び判定方法と取引例について説明します。新収益認識基準の導入による経理処理の変更や検討すべき内容を把握しておくことが重要です。

従来の収益認識基準と新収益認識基準の違い

2021年4月より「収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)」の適用が開始されました。

新収益認識基準の説明に入る前に、従来の収益認識基準について少し説明しておきます。

従来の収益認識基準

従来は「実現主義」に基づき収益を計上していました。実現主義とは、①顧客への財又はサービスの提供と②現金同等物の受領の2つを満たすことをいいます。簡単にいうと、商品を販売し売掛金が発生するタイミングで収益を計上することです。実現主義により収益を認識するタイミングについて、「出荷基準」、「納品基準」、「検収基準」など、企業によって採用する収益認識のタイミングが異なっていたのが、従来の収益認識基準の特徴といえます。

新収益認識基準

従来の収益認識基準では、「出荷基準」、「納品基準」、「検収基準」など企業により収益を計上する時期が異なっていましたが、今回の新収益認識基準では、「履行義務の充足に応じて収益を認識」することに統一されています。

履行義務の充足」とは、「財またはサービスを顧客に移転すること」です。具体例を2つ紹介します。

①商品の販売

顧客へ商品を販売したとき、顧客へ商品を引渡したタイミングで履行義務は充足されます。この場合、収益は商品を引き渡した一時点で認識します。

②保守サービスの提供

次は顧客に商品販売と合わせて、2年間の保守契約を行う例です。この場合、保守サービスの履行義務は2年間に渡ってサービスが提供されるため、一定の期間(2年間)に収益を認識します。

新収益認識基準の5つのステップ

続いて、新収益認識基準において収益を認識する5つのステップについて説明します。この5つのステップにより収益を計上する「単位」「金額」「時期」が特定できます。

例:商品の販売8,000円、保守サービス2年間2,000円を10,000円で提供した場合


5つのステップ具体的な取引例
1顧客との契約の識別①商品の販売と②保守サービス2年間の提供で1つの契約となる。
2履行義務の識別履行義務は①商品の販売、②保守サービス2年間の提供の2つ。
3取引価格の算定取引価格は10,000円。
4取引価格の配分①商品の販売8,000円、②保守サービス2年間の提供2,000円。
5履行義務の充足による収益の認識①商品の販売は商品の引渡しが完了した時点(一時点)で収益を認識。②保守サービスは期間が2年間(一定期間)であるため、1年目は1,000円、2年目に残りの1,000円の収益を認識。

ライセンス契約におけるアクセス権と使用権

次はライセンス契約におけるアクセス権と使用権について説明します。

ライセンスとは、「企業の知的財産に対する顧客の権利を定めるもの」です。具体的には、ソフトウェアや技術、動画・音楽等、フランチャイズ権、特許権、商標権、著作権などがあります。

新収益認識基準では、これらの知的財産のライセンスに関する会計処理を次のように定めています。

アクセス権と使用権の判定

1.ライセンスを供与する約束が、他の財又はサービスを移転する約束と別個のものか。
はい(ライセンスと財又はサービスは別個の履行義務) 2.企業の知的財産にアクセスする権利に該当するための次の要件をすべて満たすか。 (1)知的財産に著しく影響を与える活動(注1)を企業が行うことが、契約により定められている、又は顧客により合理的に期待されている。 (2)上記活動により、顧客が直接的に影響を受ける。 (3)上記活動の結果として、企業の活動が生じたとしても、財又はサービスが顧客に移転しないいいえ(ライセンスと財又はサービスは単一の履行義務) ライセンスと他の財又はサービスを一体として、一定の期間にわたり充足される履行義務であるか、又は一時点で充足される履行義務であるかを個別に判定する。
はい。 知的財産にアクセスする権利として、一定の期間(ライセンス期間)にわたり収益を認識する。いいえ。 知的財産を使用する権利として、一時点(使用する権利を得た時点)で収益を認識する。

(注1)以下のいずれかに該当する活動をいう。

①知的財産の形態又は機能性を著しく変化させる活動(デザイン、コンテンツ、機能を実行する能力など)
②顧客が知的財産からの便益を享受する能力が企業の活動により得られること(ブランドからの便益など)

アクセス権と使用権の具体例

続いてアクセス権と使用権の具体例について説明します。前項の判定フローも見ながら考えてみてください。

①映像コンテンツのライセンス

A社の映像コンテンツをB社が放映することを許諾する契約を締結した場合、アクセス権と使用権どちらが適用されるでしょうか。例えば、過去に制作した番組について、提供元のA社が映像コンテンツの形態や機能性、価値に著しく影響を与える活動を行わない場合には、前項表2.(1)の要件を満たさないため、知的財産を使用する権利として、一時点で収益を認識します。

これはすでに完成しているコンテンツを受け取ったままの状態で放送していることから、前項表2.(1)の要件を満たさず「使用権」と判断します。逆に、この映像コンテンツが完成品だけでなく、今後も定期的に制作して追加されるコンテンツであれば、前項表2.(1)の要件を満たし「アクセス権」と判断される可能性もあるのです。

②フランチャイズ料

A社は顧客に対しA社の商号を使用し、A社の製品を販売する権利を提供するフランチャイズのライセンスを供与する契約を締結した場合について考えます。今回は前提条件としてA社はフランチャイズの評判を高めるため、顧客の嗜好の分析や製品の改善、価格戦略、運営の効率化等の改善を行っていることとします。

この場合、A社が行うフランチャイズの評価を高める活動は、(1)知的財産に著しく影響を与える活動であり、(2)A社の活動により顧客は直接的な影響を受け(3)A社が行う活動から財又はサービスが顧客に移転しないことより、このフランチャイズ料は、知的財産にアクセスする権利として、一定の期間にわたり収益を認識します。

新収益認識基準には請求管理システムの導入で対応しよう

新収益認識基準の導入により、売上が発生した時の収益を認識するタイミングは、取引の成立時ではなく、履行義務を充足し顧客が収益を認識したときとされました。最後に、新収益認識基準の適用により影響を受ける取引例や影響が大きい業界を確認し、新収益認識基準の適用において注意すべき点を説明します。

新収益認識基準の適用で影響を受ける取引例

新収益認識基準の適用で影響を受ける取引例

新収益認識基準の適用で影響を受ける取引例を2つ紹介します。

1つめは「一定の期間にわたり履行義務を充足する取引」です。これには、①顧客との履行義務を充足するにつれて顧客が便益を受け取る経理業務等の請負サービス、②顧客との履行義務を充足することにより資産が生じたり資産の価値が増加したりすることで、顧客が資産を支配する建物建築工事契約など、③顧客との履行義務を充足することにより、別用途に転用できない資産が生じ、対価を得る権利を有するコンサルティングサービス、ソフトウェアの制作などがあります。

これらの取引は一定の期間にわたり履行義務を充足するため、その進捗度を合理的に見積もり、それに基づき収益を一定の期間にわたり計上することが必要です。

2つめは「契約と履行義務が1対1の関係でない取引」です。これはソフトウェア開発と保守サービスが1つになった契約の場合、1つの契約の中に複数の履行義務が含まれます。

この取引は、ソフトウェア開発と保守業務あわせた契約上の価格と、各サービスを単独で販売する際の価格とが異なる場合、取引価格の再配分を行って売上計上額を決定することが必要です。

例えば、①ソフトウェア開発50万円、②運用保守サービスが60万円という契約で、それぞれ単独で販売する場合の価格が①60万円、②60万円の場合、独立販売価格の比率で契約上の価格を配分し、①55万円、②55万円となります。

新収益認識基準導の適用で影響を受ける業界

新収益認識基準はすべての企業に影響がありますが、特に影響が大きい業界を一部紹介します。

1つ目はシステム開発です。

システム開発は、開発期間が長期にわたる契約やシステムの開発と保守といった、契約と履行義務が1対1にならない場合があります。この場合、新収益認識基準の適用により従来の収益認識のタイミングを変更しないといけなくなる可能性があるので注意が必要です。

2つ目はサブスクリプションなどの月額制のサービスです。

音楽や動画配信などのサブスクリプションなどの月額制サービスを1年契約した場合、1年間という長期にわたって履行義務を充足するため、取引成立時ではなく、1年間で按分した金額を毎月計上する必要があります。

新収益認識基準には請求管理システムの導入で対応しよう

最後に新収益認識基準導入において注意すべきポイントを3つ紹介します。

まず1つ目は、各種システムへの影響を把握することです。

新収益認識基準の導入により、売上の計上額と顧客への請求額が異なってくる可能性があります。契約内容により顧客に請求できるタイミングが異なるため、請求管理システムで効率的な管理と請求業務の自動化を検討することをおすすめします。

2つ目は、管理会計への影響を把握することです。

財務会計における売上の計上方法が変更になる場合、管理会計にどのような影響を及ぼすかを把握することが重要です。そのままでは過去の業績との比較ができず、当期の業績の進捗具合が把握できないため、前期の業績を組み替えて比較可能にするなどの対応が必要です。

最後3つ目は、契約内容への影響を把握することです。

履行義務の充足に応じて売上を計上する場合、取引によっては対価を受け取る権利を有しているかの確認が必要です。その場合、契約において契約解除の場合の支払い条件を明確にしておくことが求められるため、契約内容への影響を把握することが重要です。

新収益認識基準の導入により、経理処理への影響が大きい業界もあるでしょう。より複雑な処理が求められ、管理も煩雑になるため、請求管理システムの導入などで業務の効率化や自動化について、十分検討することが重要です。

まとめ

従来の収益認識基準では、実現主義において「出荷基準」、「納品基準」、「検収基準」など企業により収益を計上する時期が異なっていましたが、新収益認識基準では、「履行義務の充足に応じて収益を認識」することに統一されています。商品の販売であれば、顧客へ商品を引渡したタイミング(一時点)で収益を認識し、保守サービスの提供であれば、保守サービスの期間が経過するにつれて(一定の期間)収益を認識します。

新収益認識基準では、知的財産のライセンスに関する会計処理はおさえておきましょう。ライセンスとは、「企業の知的財産に対する顧客の権利を定めるもの」で、具体的にはソフトウェアや技術、動画・音楽等、フランチャイズ権、特許権、商標権、著作権などがあります。ライセンスへのアクセス権と使用権の判定については、知的財産にアクセスする権利に該当するための3つの要件をすべて満たすと、アクセス権として一定の期間にわたり収益を認識します。1つでも満たさない場合は、知的財産を使用する権利(使用権)として、一時点で収益を認識します。

新収益認識基準の導入により、大きく影響される取引が2つあります。1つめは「一定の期間にわたり履行義務を充足する取引」で、履行義務の進捗度を合理的に見積もり、その期間にわたり収益を計上することが必要です。2つめは「契約と履行義務が1対1の関係でない取引」で、例えばソフトウェア開発と保守業務セットの契約の場合、2つをあわせた契約上の価格と、各サービスを単独で販売する際の価格が異なる際には、取引価格の再配分を行って売上計上額を決定する必要があります。

新収益認識基準はすべての企業に影響がありますが、特に影響が大きい業界として、システム開発やサブスクリプションなどの月額制サービスがあげられます。これらの取引を扱う企業は、従来の収益認識基準から収益認識のタイミングが変わったり、収益認識と請求のタイミングが違ったりするため、管理強化や誤りを防止するためにも、請求管理システムの導入をおすすめします。事務作業の効率化や管理会計の強化、精度向上にも役立ちます。

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