SaaSでサービスを提供するソフトウェアの会計処理

こんにちは。「KIMERA」コンサルティングチームの花田です。

近年、ソフトウェアの販売方法の主流は、パッケージの買い切り型からクラウドのサブスクリプション型へシフトしています。SaaSビジネスは新しいビジネスモデルであるため、会計処理で迷うことも多いのではないでしょうか。この記事では、主に固定資産の計上をポイントに、SaaSでサービスを提供するためのソフトウェアの会計処理を詳しく解説します。

会計におけるソフトウェアとは

まず、会計における「ソフトウェア」という言葉が何を指すのかを確認しましょう。

平成23年改正の会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」において、ソフトウェアの範囲は「コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム・システム仕様書、フローチャート等の関連文書」とされています。

また「コンテンツは、ソフトウェアとは別個のものとして取り扱うが、ただし、ソフトウェアとコンテンツが経済的・機能的に一体不可分と認められるような場合には、両者を一体として取り扱うことができる。」と定められています。SaaS企業でサービス提供のために構築されるシステムは、ソフトウェアとコンテンツが一体となっている場合が多いかもしれません。

開発の意思決定

SaaSビジネスを立ち上げるとき、そのサービスがどれくらい収益を獲得できるのか?という収益計画・投資計画の策定が必要です。収益の予測や投資計画の策定のためには、開発費用・開発後の運用費の見積もりが行われます。この見積もりにかかった費用は、会計上、「販売費及び一般管理費」の区分に計上されます。具体的な勘定科目は「研究開発費」「試験研究費」などが用いられます。

なお、この費用は税務上、「研究開発税制」という制度で税額控除の対象となる場合があります。研究開発税制とは、企業が研究開発を行っている場合に、法人税額から、試験研究費の額6%~14%を控除できる制度です。控除条件や上限があり、改正の可能性もありますので、国税庁の研究開発税制を随時チェックしてみてください。

ソフトウェアの資産計上

次に、ソフトウェア開発費を固定資産として認識するタイミングと金額について見ていきましょう。

タイミング

費用の見積もりや市場調査、研究開発など、SaaSサービスの構築には様々な段階がありますが、収益を生み出す資産として認識できるのはどの時点からでしょうか。市場開発目的のソフトウェアについては、上述の実務指針において「製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち最初に製品化された製品マスター」の完成時点とされています。

少しわかりにくい表現ですが、「販売の意思が明らか」になる時点、とはそのSaaSを市場に出すことを意思決定した時点と考えることができます。例えばサービスのローンチを発表し、ホームページなどにリリース情報やサービス内容を載せるなどの方法で、市場で販売する意思が明確になった時点といえるでしょう。

また、自社利用目的のソフトウェアとする場合は、「将来の収益獲得または費用削減が確実であると認められる状況になった時点」で資産計上すると定められています。

このように、ルール上はソフトウェアを会計上「市場販売目的」とするか「自社利用目的」とするかで資産計上のタイミングが変わってきます。しかし、実務上はいずれの場合もサービスの提供開始時点で資産計上が行われることもあるようです。自社の基準に沿って、実態に即した正しいタイミングで資産計上することが重要です。

資産の取得金額

無形固定資産として貸借対照表に表示され、減価償却されていくことになるソフトウェアですが、取得金額はどのように算定できるでしょうか。

「サービスを提供するための環境を構築するためにかかった費用」が当該ソフトウェアの取得原価となる、というのが基本的な考え方です。エンジニアの人件費や、利用マニュアルや使用説明書等の制作のための外注費、開発のために用いた機器代金なども含めることができます。特に人件費は開発コストの多くを占めるため、誰がどのプロジェクトに何時間従事したか?という時間管理は、資産計上額に直結することになります。

一方で、次の①~③のような費用は「ソフトウェアの取得価額に算入しないことができる」ともされています。

①自己の製作に係るソフトウェアの製作計画の変更等により、いわゆる仕損じがあったため不要となったことが明らかなものに係る費用の額
②研究開発費の額(自社利用のソフトウェアについては、その利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかなものに限る。)
③製作等のために要した間接費、付随費用等で、その費用の額の合計額が少額(その製作原価のおおむね3%以内の金額)であるもの

つまり、これら3つは取得原価に含めて資産とするのが原則ですが、場合によっては一般管理費として処理することも可能というわけです。

このように選択的適用が可能なルールが定められていますが、もちろん恣意的に一般管理費を減らし利益を操作するようなことは認められません。資産処理と費用処理の区分とその判断基準を明確にしたうえで、そのルールにのっとった処理を行っていきましょう。また、どちらの場合でも明確な根拠が必要となるため、それぞれのコストをプロジェクトに紐づける管理が不可欠です。

なお、資産の取得についても税負担を軽減することができる制度があります。中小企業(資本金が1億円以下の企業)が、取得価額が30万円未満の減価償却資産を取得した場合には、その取得価額を損金算入することができます。こちらの制度も随時変更される可能性があり、また取得年度によっても異なりますので、最新の情報をチェックしていただくことをおすすめします。

ソフトウェア仮勘定を使いこなそう

有形固定資産でいうところの「建設仮勘定」のソフトウェア版が「ソフトウェア仮勘定」です。開発途中では最終的にいくらが取得原価となるのか、正確な金額は分かりません。そのためサービスの構築途中は「ソフトウェア仮勘定」という仮の勘定に日々かかったコストを蓄積していき、サービス提供開始時に「ソフトウェア」勘定に振り替える方法が一般的です。

ここでも、日々のコストと各プロジェクトをリンクさせる管理が必要になります。社内で案件番号を一貫して管理・情報共有しましょう。また、ソフトウェアの取得価額の成り立ちについて周知し、案件ごとのコスト管理の重要性について、他部門に理解を促すと良いかもしれません。各人が当事者意識をもって数値を記録することが期待できますし、集計や管理がよりスムーズになります。

改良・アップデート

既存のソフトウェアの仕様を大幅に変更するときにかかったコストは、どのように会計処理するべきでしょうか。「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」では「製品マスター又は購入したソフトウェアの機能の改良・強化を行うための費用は、原則として資産に計上するが、当該改良が著しい改良と認められる場合は研究開発費として処理する。」とされています。

将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合には、改良にかかった費用を無形固定資産として計上することができますが、「著しい改良」の場合は費用処理となります。

「著しい改良」とは、研究・開発の要素を含む大幅な改良のことです。具体的には、機能の改良・強化を行うためにプログラムの大部分を再制作する場合や、ソフトウェアが動作する環境(言語、プラットホームなど)を変更・追加するための大幅な修正をするときなどです。この場合にかかったコストは研究開発費として費用処理します。

SaaSサービスのアップデートを行う場合は、収益獲得に確実につながるのか?それとも研究開発の意味合いが強いものなのか?という判断が必要になるのです。

まとめ

SaaSサービスのためのソフトウェアは日々進化しており、さまざまなバリエーションが登場しています。しかし、SaaSビジネスに特化した個別の会計基準は定められていないのが現状です。実務指針は示されているものの、内容がSaaS市場の成長に追い付いていない部分があります。既存の原理・原則を理解したうえで、ポイントを捉えて実態に即した正確な会計を行いましょう。監査法人や税理士など専門家とよく相談して処理を決定することも重要です。また、新しいビジネスモデルだからこそ、決まりきったやり方ではなく、各部署との連携の上での検討や判断、仕組みづくりが必要になります。経理担当者の頑張りがSaaSビジネスの収益性・生産性を上げることのできる、やりがいのある分野ともいえるでしょう。

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