SaaS型サービス提供時の会計処理のポイントとは?資産計上と収益認識を理解しよう

SaaS型サービス提供時の会計処理のポイントとは?資産計上と収益認識を理解しよう

こんにちは。「KIMERA」コンサルティングチームの花田です。

今回はSaaS型サービスを提供する企業の会計処理をご紹介します。主に資産計上と収益認識にフォーカスを当てて、SaaS型ビジネスでポイントとなる会計処理について詳しく解説します。

ソフトウェア開発・制作費の処理

SaaS型サービスを提供するためのプラットホームや環境を自社で構築する場合、その制作過程は、研究開発活動と、それを提供するためのアプリケーションやOS、ミドルウエアなどの制作活動に区分されます。この過程で発生した費用のうち、開発にかかった費用は「研究開発費」として発生時に費用処理されます。研究開発終了後のソフトウェアの制作活動において発生した費用は、「ソフトウェア」等の科目で無形固定資産として資産計上されます。

なお、サービス提供のためのサーバーやストレージなど、目に見える「形あるモノ」の取得原価は、有形固定資産となります。

「市場販売目的」or「自社利用」?

無形固定資産に計上されたソフトウェアは、会計処理上「自社利用ソフトウェア」か「市場販売目的ソフトウェア」に区分されます。

「自社利用ソフトウェア」は「ソフトウェア等を利用することにより情報処理サービスの提供者が、契約に基づいて情報等の提供を行い、受益者からその対価を得ることとなる場合」、と定められています。一方の「市場販売目的のソフトウェア」は不特定多数のユーザー向けに開発したソフトウェアの販売や、ライセンス販売するソフトウェア、と定義づけられています。

SaaSサービス用ソフトウェアに関しては、自社利用か市場販売目的かの判断基準が曖昧だったため、社団法人情報サービス産業協会(JISA)が指針を発表しました。

まず、「一般的なASPサービス」の場合、「自社利用のソフトウェア」として会計処理することが明記されました。「一般的なASPサービス」 の定義は次のように定められています。

データセンターにサーバーを設置し、インターネット等を通じて、ユーザにサービスを提供(ユーザは、使用量や期間に応じて料金を支払う)する形態。ユーザはデータセンターのサーバーを通じてのみサービス提供を受けることができる。

特定の顧客向けに制作するソフトウェア(アウトソーシングサービス目的のソフトウェアなど)と不特定多数の顧客向けに制作するソフトウェア(共同利用型サービス目的のソフトウェアなど)がある。

出典:【JISA】SaaS・ASPビジネスに関する会計ルールの論点整理を公表

また、「パッケージソフトの期間利用型」は通常のパッケージソフトと同様に「市場販売目的のソフトウェア」として会計処理すると示されました。パッケージソフトの期間利用型とは、「不特定多数の顧客向けに制作したソフトウェアを、インターネット等を通じてユーザーにライセンス提供し、ユーザーはそのソフトウェアをパソコン・サーバー等にインストールすることにより、ソフトウェアを利用する。ユーザーは、使用量や期間に応じて料金を支払う形態。」とされています。

まずは上記の指針にのっとって、自社のソフトウェアがどちらに分類されるのかを判断しましょう。複数要素の組み合わせで一つのサービスが提供されている場合など、一概に判断できないこともありますので、担当の公認会計士など専門家に相談されることをおすすめします。

自社利用のソフトウェアの償却方法

自社利用ソフトウェアの減価償却は、利用の実態に応じて最も合理的な減価償却の方法を採用すべきとされています。一般的には5年間で定額償却されます。5年を超えて償却する場合は合理的な根拠が必要と定められています。また減損会計の適用対象なため、収益性が大きく減少した場合などには、資産価値を下げることが必要です。

市場販売目的のソフトウェアの償却方法

市場販売目的のソフトウェアの減価償却方法としては、以下の2つの方法があります。

  • 見込販売数量に基づく方法
  • 見込販売収益に基づく方法

市場販売目的のソフトウェアは、他の固定資産のように間接的に収益獲得に貢献するものではなく、販売収益と直接関連付けることができます。そのため、双方とも販売にかかわる数値が基準になっています。

どちらの方法を採用するにしても、見込み販売数量・収益は適宜見直さなければなりません。また、毎期の減価償却額は、見込販売数量(収益)に基づく減価償却額と残存有効期間(販売可能期間)に基づく均等配分額とを比較し、いずれか大きいほうの額を計上することになっています。残存有効期間については、原則として3年以内の年数とされています。3年を超える年数とするときには、合理的な根拠が必要です。

なお、見込販売収益・数量の見直しによって収益性の変動を反映させることができるため、別途減損をする必要はありません。

収益認識に関する会計基準

継続請求を行うSaaSを提供する企業で重要となるのは収益認識です。2018年に企業会計基準委員会により、「収益認識に関する会計基準」が公表されたことで、収益認識基準が明確にルール化されました。ここからはSaaSビジネスでどのように収益を認識すべきかをみていきましょう。

まず、「収益認識に関する会計基準」は「顧客との契約から生じる収益」に適用されます。SaaSの収益は、収益認識基準の対象となるということをまず押さえておきましょう。

そして、収益認識の基本原則は、「約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識する」となっています。(企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」第16項)。

具体的には次の5つのステップで収益を認識します。

  1. 契約の識別    
  2. 履行義務の識別
  3. 取引価格の算定
  4. 取引価格の配分
  5. 収益の認識

アクセス権と使用権の違い

SaaSビジネスは、顧客にソフトウェアのライセンス(使用許諾権)をインターネット経由で提供します。収益認識基準では、ソフトウェアのライセンスの供与を「アクセス権」と「使用権」に区分しています。そのため、まずは提供するSaaSがアクセス権と使用権のどちらになるかを識別する必要があります。

「アクセス権」は次の条件をすべて満たすものと定義されています。

  1. 顧客が権利を有する知的財産に「著しく影響を与える活動」を企業が行うことが、契約により定められていること
  2. 知的財産に「著しく影響を与える企業の活動」により、顧客が直接的に影響を受けること
  3. 財又はサービスが顧客に移転しない

ここで述べられている「著しく影響を与える活動」とは、コンテンツや機能を実行する能力を変化させる、という意味です。つまり、常に機能やコンテンツがアップデートされるものは、「アクセス権」となり、機能のアップデートがなく、全く変化しないものは「使用権」と判断されます。

そして、「アクセス権」は、履行義務が一定期間に充足されるものとして、期間にわたり売上を分割計上し、「使用権」は履行義務が一時点に充足されるものとして一括して売上計上します。

前受金と売上

 アクセス権と判断されたSaaSは、サービスの提供が終わった分の金額のみを計上します。そのため、年額で一括して対価を受け取る場合は、サービスの提供ごとに売上を分割して計上します。役務の提供が完了していない部分についての入金は、前受金として管理され、売上計上と同時に前受金が取り崩されていきます。

例えば以下のような取引が行われた場合、会計処理はどのようになるでしょうか。

初期費用:5万円(履行義務:導入準備)
年額:120万円(履行義務:機能が定期的にアップデートされるSaaSの提供)
顧客からの入金:2021年4月1日、125万円(一括での入金)
契約期間:2021年4月1日~2023年3月31日
(導入準備は2021年3月末に完了しているものとします。)

この契約は機能のアップデートがあることからアクセス権と判断できますので、年額の120万円を12ヶ月で分割して、売上計上していくことになります。

2021年4月1日の入金にかかわる仕訳

現預金 125万円 / 売上 5万円(導入サービスの提供にかかわる対価)

               前受金 120万円

そして、2021年4月~2023年3月の24か月間、毎月下記の仕訳を起こします。

前受金 10万円 / 売上 10万円

2023年3月末日には前受金の残高が0円となるはずです。

収益計上の実務上のポイント

これまで見てきた通り、SaaSサービスの提供においては、契約内容の把握とそれに応じた正しい金額・正しいタイミングでの売上計上がポイントとなります。そのためには、サービスの提供状況と入金状況について、社内でのシームレスな情報共有が不可欠です。また、経理部門においては、ミスなく正確に前受金を取り崩し、売上を計上していく業務フローの構築が重要です。

SaaSの会計処理の効率向上

SaaS提供企業において効率のよい会計処理を行っていくためには、SaaS型ビジネスに強い収益認識自動化システムを導入するという方法があります。売上計上から前受金管理、請求業務まで一気通貫で自動化できるシステムがあります。こういったシステムを導入することで、最新の会計基準に沿った処理を行うだけでなく、誤計上や請求漏れを防ぎ、バックオフィスの生産性を高めることができます。

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