IFRS16号から考察する新リース会計基準の設定による貸手側への影響

IFRS16号から考察する新リース会計基準の設定による貸手側への影響

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

2016年に公表され、2019年から国際会計基準で適用開始となったIFRS第16号「リース」。その借手企業への影響は、コンビニチェーンや小売業など、特に多店舗展開している企業において、昨今リース資産およびリース負債のオンバランス化の影響が注目を浴びてきました。

IFRS16の公表を受けて、国内のリース会計基準はどのように改正されていくのか、また貸手側への影響はどのようになるのか、会計基準の設定団体の動向やIFRS16の考察を踏まえて解説していきます。

新リース会計基準導入に向けた背景及び検討状況

現在の国内のリースに関する会計基準は、2007年3月に当時の国際会計基準第17号「リース」(IAS17)とのコンバージェンスも踏まえて改正された「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)が定められています。この基準は、リース取引をファイナンス・リースとオペレーティング・リースとに分類し、それぞれ通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理と通常の賃貸借取引に係る方法によることを求めているものです。

その後、国際会計基準審議会(IASB)や米国財務会計基準審議会(FASB)では、リース会計の改正について検討をした結果、IASBは2016年1月に国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」を公表し、FASBは、同年2月に会計基準更新書第2016-02号「リース(トピック842)」を公表することになりました。

これを受けて、日本の会計基準の検討機関である企業会計基準委員会(ASBJ)において、2016年8月にIFRS 第16号「リース」を具体的な課題として取り上げ、2019年3月において、日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組みの一環として、すべてのリースについて資産及び負債を認識するリースに関する会計基準の開発に着手することが決まりました。なお、合わせてリースの貸手の収益認識に関する会計処理(リース業における割賦販売取引の会計処理を含む)について検討することを予定しています。

現時点においては、新リース会計基準導入に向けて、各論点についての検討を行っており、公開草案の公表に向け審議を進めている状況となっています。

IFRS16の概要

IFRS16とは、IASBが2016年1月に公表したIFRS第16号「リース」という新しいリース基準で2019年1月1日から適用が開始されています。この基準では、リースの概念を特定の資産を使用する権利(使用権資産)をもとに整理した単一モデルが特徴となっており、特に借手側の会計処理において、従来の基準ではオペレーティング・リースとして損益取引のみ認識していたものも、原則、リース資産やリース負債として貸借対照表上オンバランス処理されることになります。したがって、リース資産は減価償却費として費用認識されるとともに、リース期間に応じてリース債務の支払とともに支払利息が認識される。

一方、貸手の会計処理は、旧リース基準のIAS第17号の会計処理が概ね引き継がれることになり、基本的な会計処理は変わりません。IAS第17号と同じ従来の考え方である2区分モデル(ファイナンス・リースとオペレーティング・リース)に従って会計処理を行うことになっております。

リース判定の要件と主な会計処理は以下のとおりです。

なお、借手において認められている、短期リース(1年以内)や少額リース(5,000ドル)の例外処理は、貸手においては認められていない。


ファイナンス・リースオペレーティング・リース
分類
原資産の所有に伴うリスクと経済価値
ほとんど全てを移転するほとんど全てを移転しない
会計処理・リース対象の原資産の認識を中止し、ファイナンス・リースにより保有する正味リース投資未回収金(「リース債権+残存資産」の現在価値)として認識
・リース期間にわたり利息額を金融収益として認識
・なお、リース対象資産の帳簿価額と公正価値に乖離がある場合の差額は一時損益として認識
・リース対象資産引き続き認識
・リース料をリース期間にわたり収益として認識
・原資産は主に減価償却費等として費用認識
会計処理の違い

新リース会計基準設定に際し想定される貸手側の処理

既述のとおり、現在国内の新リース会計基準の導入に向けた開発作業が進められている中で、国際的な整合性を図ることは決まっていることから、概ねIFRS16の考え方や会計処理に近いものが設定されてくるものと考えられます。

したがって、特に貸手側の会計処理については、IFRS16の考え方である、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの2区分モデルが踏襲されることになろうかと推察致します。

ただし、IFRS16と現行日本基準の貸手の会計処理について、以下の点について取り扱いに違いがあるケースがあるため、今後の新会計基準開発の行方を注視していく必要があります。

貸手の会計処理IFRS16現行日本基準
リースの分類の判定方法実質判断(数値基準なし)具体的な数値基準がある
ファイナンス・リースの収益の表示方法正味リース投資未回収額に対して実効金利法を適用し、金融収益を計上する左記の方法以外に2つの方法が認められている。
‐ リース取引開始日に売上と売上原価を計上する方法
‐ リース料受取時に売上と売上原価を計上する方法
オペレーティング・リースの処理リース期間にわたり、定額法 ただし、他の規則的な方法が適切である場合はその方法を利用する賃貸借取引に準じた処理と定められているのみ。左記のように、期間を通じた調整などは明記されていない。

まとめ

上場企業において、IFRS16含めた国際会計基準の任意適用が300社をすでに超えており、国内においても国際会計基準に関する考え方などが浸透しつつあります。

ただし、国際会計基準の国内企業への適用は、あくまでグローバル企業を中心とした上場企業を中心に、連結財務諸表において適用されているのみであり、中堅・ベンチャー上場企業や、個別財務諸表への適用、非上場企業への適用まで含めると、まだ途上段階であると言えます。

現時点では、リースの貸手企業に対する影響は限定的になると思われますが、今後、新リース会計基準の公開草案やその適用時期や適用範囲の動向を十分注視し、国内の新リース基準の改正に伴う自社への影響を、事前に把握分析しておくことが望ましいです。

参考資料

財務会計基準機構 企業会計基準委員会 企業会計基準委員会議事

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