2021年4月スタート「収益認識に関する会計基準」による会計への影響とは?

2021年4月スタート「収益認識に関する会計基準」による会計への影響とは?

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

2018年3月30日に収益認識基準のルールとして、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」と企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」が公表されました。

「約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識する」(企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」第16項)として、「契約の識別」「履行義務の識別」「取引価格の算定」「取引価格の配分」「収益の認識」の5つのステップで収益を認識することになります。

これは国際的な会計ルールであるIFRS第15号を基礎にして作られており、2021年4月1日より適用されます。

「収益認識に関する会計基準」による会計への影響

この変更は国際的ルールに合わせただけではありません。

今までの実現主義は収益を「財貨又は用役の移転とそれに対する現金または現金同等物の取得」の実現の時点で認識するとしていました。つまり、履歴義務の充足(仕事を完了したタイミング)と現金または現金同等物の取得(お金を受け取ったタイミング)が異なる場合には、実現の時点が「出荷基準」「検収基準」など形式的な基準から一番会社の実態に即したものを選択する必要があります。

しかし、これはで会社の実現のタイミングの解釈によって売上の計上タイミングが異なり、また実態に即しているとも言えませんでした。そこで、5つのステップで収益認識を行うことで、取引の実態に即した会計処理を行い、かつ他の会社との会計の比較可能性を確保することになります。

これまでの「実現主義」の問題点

収益認識の方法が変更されて従来の会計処理のデメリットを排除できます。しかし、同時にこれまでの収益計上のタイミングつまり売上の計上タイミングが変わる可能性があり、これは法人税等にも影響するでしょう。

「収益認識に関する会計基準」による法人税法の改正

「収益認識に関する会計基準」が公表されたことにより、平成30年度税制改正によって収益の計上時期・計上額に関する規定が法人税法第22条の2及び、法人税法施行令第18条の2で定められました。これは2018年12月31日以後終了する事業年度から適用可能であり、2021年4月1日以後開始する事業年度から強制適用になります。なお、中小企業(監査対象ではない法人)については強制適用後も引き続き企業会計原則に従った処理も可能です。

「収益認識に関する会計基準」は、「企業会計原則」に優先して適用される会計基準と位置付けられ、「履行義務」という新たな概念をベースとして収益の計上単位、計上時期及び計上額を認識する会計処理が行われることとされています。収益認識基準の「履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する」という考え方は権利確定主義と整合性があり、一部を除いてこの考え方が法人税等に取り込まれました。

従来の収益の計上時期と金額

従来法人税法では「内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする」(法人税法22条)とされています。

益金とは「別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額」(法人税法22条の2)であり、また「収益の額……は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるもの」(法人税法22条の4)とされています。つまり、基本的には「企業会計原則」に従った会計における収入に一部「別段の定め」を加えた金額が法人税計算における収入です。

「収益認識に関する会計基準」対応した法人税法22条の2

「収益認識に関する会計基準」は、「企業会計原則」に優先して適用される会計基準と位置付けられました。

「収益認識に関する会計基準」に対応した収益の計上時期について規定された法人税法22条の2の1から3項で規定されています。これによると、目的物の引渡し、役務の提供の属する日の属する事業年度のほか、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って引渡し又は役務の提供の日に近接する日(契約効力発生日、仕切精算書到達日等)の属する事業年度において収益として経理したときは、益金の額に算入されます。つまり、「収益認識に関する会計基準」に基づく原則的な処理を行うことを要請しています。また、重要性の原則によって、適用指針の代替的な取扱いを適用して出荷基準等を適用することも支配が移転する日と近接しているのであれば適用することもできますし、顧客との契約の観点で内容や金額によって重要性が乏しい場合はそれぞれの履行義務について一体で処理することも可能とされています。また、契約変更時の対応や、短期間の工事契約・ソフトウェアなども簡便的な処理が認められます。

「収益認識に関する会計基準」に対応した収益の計上時期について規定された法人税法22条の2の4から5項で規定されています。これによると「引渡し時の価格等(販売·譲渡をした資産の引渡し時における価額又はその提供した役務につき通常得べき対価の額)」を益金が益金となります。通常の値引きリベート返金など取引資産を正確な時価に修正する処理は益金になりますが、貸倒れや返品などの可能性についてはその影響は認められません。また、割戻を見込む販売や返品権付販売の変動対価(法人税法基本通達2-1-1の11)、商品引換券等の発行に係る収益の帰属時期(法人税法基本通達2-1-39)や非行使部分に係る収益の帰属の時期(法人税法基本通達2-1-39の2)などは別で通達があります。

「収益認識に関する会計基準」の法人税との対応

今まで確認したように、法人税法は「収益認識に関する会計基準」によって改正され、「企業会計原則」に優先して適用される会計基準と位置付けられたため基本的な収益認識とそれによる会計処理は「収益認識に関する会計基準」に従って行うことで益金とすることができます。一部「収益認識に関する会計基準」があるため、その点については注意深く確認するようにしましょう。

また、「収益認識に関する会計基準」は監査対象とならない中小企業では適用せずこれまで通り「企業会計原則」に従った処理を行うことが認められていますが、取引先が大企業であれば「収益認識に関する会計基準」に有利な取引を行う場合や、特に返品など「収益認識に関する会計基準」に従った方が有利な可能性もあるため、中小企業の経理担当者様や経営者様もしっかり確認したほうがよいでしょう。

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