サブスクリプションビジネスの主要KPI、ARRとRPMを見てみよう

サブスクリプションビジネスのKPIを見てみよう

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

サブスクリプションビジネスは様々な業種で利用されていますが、SaaS(Software as a Service)との相性が特に良く、NetflixAdobeなど大手のサービス提供事業がその仕組みを利用して業績を拡大させていることで有名です。

今回は、これらのサービスを、サブスクリプションの主要KPIである年間経常収益(ARR)と経常利益(RPM)を軸に、AdobeとNetflixの動向を見てみましょう。

主要KPIとSaaSビジネスについて

サブスクリプションビジネスがSaaSと相性が特に良い理由として、会員顧客は初期投資が不要で、サービスを必要な分だけ利用できるといったメリットがあげられます。

例えばNetflixなどの動画サービスは会員が定額利用料を支払うだけで好きなだけ動画を視聴できます。Adobeでは、提供しているサービス「Creative Cloud」で最も人気が高いアプリのPhotoshopやIllustratorを定期的にアップグレードし、例えばアプリの起動時間を短くしたり、迅速にファイルを開けるようにしたりと、その利便性を高め続けています。さらに会員顧客は利用しているサービスが自動的にアップグレードされるため、バージョンアップの手間から解放され、高いパフォーマンスを維持することができます。

それではサブスクリプションの主要KPIである年間経常収益(ARR)と経常利益(RPM)について、AdobeとNetflixの動向を具体的に見てみましょう。

年間経常収益(ARR:Annualized Recurring Revenue)

サブスクリプションビジネスは将来の収益予想をしやすく、ARRとして表しています。ARRは解約前の予想総収益です。サブスクリプション経済の企業は、実際、年初にはその1年間の収益額を把握しています(Salesforce「スタートアップガイド」より)。

ARRを拡大させるには会員顧客により単価の高いサービスを利用してもらう「アップセル」と、他のサービスを併用して使ってもらう「クロスセル」があります。

「アップセル」事例としてNetflixの場合、会員顧客がより高画質で視聴したい、複数のデバイスで利用したい、という要望にあわせ3つのプランを用意しています。

ARRを拡大させる「アップセル」と「クロスセル」

もし会員顧客がベーシックプランの880円からスタンダードプランの1,320円にアップグレードすると、顧客単価が50%増加し、プレミアムプラン1,980円なら125%も増加する仕組みです。

  • ベーシックプラン 税込880円(SD画質で端末1台のみ利用)
  • スタンダードプラン 税込1,320円(HD画質で2台まで利用可能)
  • プレミアムプラン 税込1,980円(HDまたは4Kで4台まで利用可能)

「クロスセル」事例としてAdobeの場合、Creative cloudサービス、Experience cloudサービス、Acrobatサービス等を提供しています。

例えばクリエイター部門が動画編集にCreative cloudを利用し、マーケティング部門は顧客分析にExperience cloudを利用、管理部門が書類の管理にAcrobatを利用するなど、1つの企業が様々なAdobeのサービスを利用できるようにして収益を拡大しています。

経常利益(RPM:Recurring Profit Margin)

経常利益は成長の元手になる資金で、基本的にRPMがプラスであれば企業は成長のための追加投資か、コストコントロールにより採算性を良くするかを選択できます。(Salesforce「スタートアップガイド」より)。

RPMの算式は次のとおりです。ここでは営業及びマーケティング費用は除外されていますので、損益計算書の「Operating Profit」と一致しません。

RPM=年間経常利益(ARR)−{売上原価(COGS)− 研究開発費(R&D)− 一般管理費}

既存の収益(ARR)だけではライバル企業に追いつかれる可能性がある

Netflixのキャッシュフローを見ると、FY2019は営業活動で約2,887百万ドルの資金流出、FY2018も約2,680百万ドルの資金流出でした。主な要因は自社作成コンテンツのための先行投資です。さらにNetflixはFY2020で170憶ドルをコンテンツに投資する(2020年1月時点)としており、これはライバル企業のDisney+(ディズニープラス)の10億ドル、ワーナーメディア参加のHBOの20憶ドルを大きく上回っています。

動画視聴サービス市場は激化しており、規模のメリット(コンテンツ数)を会員顧客に訴求するため、RPMを大きく超えて先行投資を続けています。

なお、FY2020はコロナ禍により有料会員数が26百万人と急増しましたが、Netflixは元の状況に戻れば会員数の増加も通常に戻るだろうと予測しています。

出典:Netflix 2020 Quarterly Earnings

先行投資のための資金調達と返済余力

事業を継続していくためには利益(資金)が必要です。投資資金がなければ設備投資や新規事業のための先行投資ができず、運転資金が足りなければ倒産の危機に直面します。

Netflixの資金事情をキャッシュフローで確認すると、主にコンテンツ投資を補うため、毎年多額の社債を発行し資金を確保しています。

2019FYは約4,469百万ドル、2018FYは約3,961百万ドルでした。貸借対照表の残高(Long-term debt)は2019FYで約14,759百万ドル、2018FYで約10,360百万ドルとなりました。これら社債の返済は2030年まで続きますが、先にコンテンツ制作を完了し魅力的な動画数を提供することで他のライバルを圧倒し、毎年のARRをさらに急拡大させて将来の返済余力を生み出す戦略なのかもしれません。

返済余力については課金体系の変更もありえます。Netflixの有料会員総数は1億9295万人(2020年6月)に達していますので、もし月額課金体系を1人あたり1ドル増加したら、Churn(解約率)が大きく悪化しない限り、毎年2憶ドル前後の収益増加になるスケールメリットがあります。

参考資料

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