前受金・前受収益の違いと実務上の留意点とは?仮受金との混同など注意したい4つのポイント

前受金・前受収益の違いと実務上の留意点とは?仮受金との混同など注意したい4つのポイント

こんにちは。「KIMERA」コンサルティングチームの花田です。

経理業務において、仕訳のミスは可能な限り避けたいものですが、顧客の増加等により、売上計上のタイミングや各勘定科目の管理も煩雑になりがちです。

この記事では、少しでも業務の負担減につながるよう、特にサブスクリプションビジネスやSaaSで利用されることの多い前受金と前受収益の概要と双方の科目の違いを説明したうえ、実務上の留意点も紹介します。

前受金とは?

商品・サービス等の代金の一部または全部を役務の提供前に受け取った場合、「前受金」勘定で仕訳を行います。売上の計上は、売上が発生した際に行われます。前受金として金銭を受け取ったタイミングでは、まだ商品の引渡しやサービスの提供が完了していないため、売上に計上することができません。

実現主義とは?

これは会計原則において「実現主義」とよばれる考え方に基づいています。実現主義とは、「売上高は、販売の実現をもって計上する」という原則です。サービス提供の場合はサービスの提供が完了した時点(=実現した時点)で売上を計上することになります。売上高は企業にとって最重要科目であるため、過大に計上したいという負のモチベーションが働きやすい科目です。そのため、売上の計上基準は保守的に、厳しく定められているという背景があります。

なお「実現主義」に対応する言葉に「発生主義」という言葉があります。費用を認識する際はこの「発生主義」で認識します。例えば賞与引当金について考えてみましょう。実際に支払が行われるのは少し先のボーナス支給日ですが、従業員が働いているという事実は毎月発生しています。そのため、賞与引当金繰入という費用を毎月計上するのです。

しかしこの発生主義で売上を認識すると、どうなるでしょうか。製品やサービスを受注・契約した段階で売上を計上してしまうことになります。金額的な裏付けがない状態で売上を計上することが可能になってしまい、保守的とはいえない処理になります。この意味でも売上を計上する際には実現主義で行われます。

前受金の仕訳例

このルールを踏まえ、売上に先立って入金された金額については、“前もって受け取った“という意味で「前受金」勘定で仕訳をします。(例1)

例1-1:当社で提供している商品の販売契約をX社と締結し、代金1,000,000円を受け取った。なお納品は後日行う。

借方貸方
科目金額科目金額
現金預金1,000,000前受金1,000,000

そして商品・サービスの提供が完了した時点で売上等の収益科目に振り替えます。

例1-2:例1の契約について商品を納品した。

借方貸方
科目金額科目金額
前受金1,000,000売上1,000,000

前受収益とは?

前受収益は、企業会計原則注解・注5において、以下のように定義されています。

前受収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の収益となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、前受収益は、かかる役務提供契約以外の契約等による前受金とは区別しなければならない。

企業会計原則注解・注5 「経過項目勘定について」

前受収益は、翌期以降の分まで代金を受けとっている場合に用いられます。SaaS企業では、継続的に役務(サービス)を提供して、翌期以降の売上分も年額一括で受けとることがよくあります。この場合、すべてのサービスの提供・契約期間が当期のうちに完了するのであれば、特別な処理は必要ありません。しかし、決算をまたぐ場合は、翌期以降に計上するべき収益を当期の損益から取り除く仕訳が必要になります。

今あるお金を翌期以降に繰り延べるこの処理を「収益の繰り延べ」と言います。翌期以降の収益に該当する部分が「前受収益」となります。

例2-1:x1年12月1日、当社で提供している240,000円(年払い)のサブスクリプションサービスの契約をY社と行い、代金を受け取った。なお、当期の会計期間はx1年4月1日からx2年3月31日である。

借方貸方
科目金額科目金額
現金預金240,000売上 240,000

例2-2:x2年3月31日、決算を迎えたため、例3の契約について翌期分の収益の繰延処理を行う。

借方貸方
科目金額科目金額
売上160,000前受収益 160,000

※160,000円=240,000円×8か月(翌4月~11月分)÷12か月
※契約開始月の12月から、決算月の3月までの4か月分(240,000円÷12か月×4か月=80,000円)は当期の収益となります。
→当期の損益計算書には、繰り延べられていない4か月分(240,000円△160,000円=80,000円)だけが収益として計上されることをチェックしましょう。

例5:x2年4月1日、前期末に計上した前受収益の期首振替処理を行う。

借方貸方
科目金額科目金額
前受収益160,000売上 160,000

※前期末(x2年3月31日)の仕訳を反対仕訳することで、繰延処理した売上をx2年度の収益として計上します。

前受金と前受収益の違いとは?

ここからは、混同しやすい「前受金」と「前受収益」の違いについて解説します。

前受金は、商品やサービス等の提供を行う前に代金を受け取ったときに計上します。対して、前受収益は、当期の収益として計上した金額のうち未提供の部分を翌期以降に繰り延べるための科目です。

このため、前受金は期中の日常的な取引で発生します。対して、前受収益は決算時の決算整理仕訳にのみ登場する科目です。さらに、前受金は売上が実現するまでそのままになりますが、前受収益は翌期首に振替処理が行われます。この点は、前受金と前受収益の性質が大きく異なる重要なポイントです。前受金は日常的に使う、前受収益は決算整理に使う、という点を押さえておきましょう。

前受金と前受収益の違いをまとめると下記の表となります。

前受金と前受収益の違いのまとめ

前受金も前受収益も売上に影響する

上記のような違いはあるものの、どちらの科目も売上に影響を及ぼすという点で重要な科目です。前受金を正しく認識していなければ、売上への振替金額やタイミングを誤ってしまうことになります。前受収益については、正確な期間配分を行わなければ売上を過大に取り崩してしまったり、逆に少なく計上することになり得ます。どちらも貸借対照表の負債に計上されますが、損益計算書にも影響を与え、売上を左右するため適切な管理が不可欠です。

前受金・前受収益を扱うときに注意したい4つのポイント

ここからは、前受金・前受収益を扱うときに注意したいポイントや、業務効率を向上させるカギとなる点を挙げていきます。

1. 仮受金との混同

前受金や前受収益と混同されがちな勘定科目に、「仮受金」があります。仮受金は、入金があったものの、その理由が不明の際に一時的に使われる勘定科目です。計上すべき勘定科目が分からない場合や、入金額自体が未確定である場合にも使用されます。

仮受金勘定は一時的に発生する勘定科目ですので、そのまま決算を締めることはできません。残高を残して決算期を迎えた場合は内容を確認のうえ、しかるべき勘定科目へ振り替える必要があります。あくまでも一時的に用いられる科目であり、決算時には振り替えられるため、貸借対照表に記載されることはありません。

例えば、x1年3月1日、会社の口座に取引先リストにない名義から10,000円が入金されたとします。何に対する入金なのか?営業部署や関係のありそうな部署に問い合わせましたが、その日のうちには判明しませんでした。この会社は日次で預金残高を合わせているため、x1年3月1日は取り急ぎ下記の仕訳を入力します。

借方貸方
科目金額科目金額
現預金10,000仮受金10,000

この会社は3月決算の会社だったため、3月中には入金の内容を把握する必要がありました。社内で徹底的に調査したところ、経理部門への連絡が漏れていた請求書が発見されました。こうしてこの10,000円の入金が売掛金の入金であることが判明したので、下記のような仕訳を起票します。ここで3/1に計上した仮受金が取り崩されます。

借方貸方
科目金額科目金額
仮受金10,000売掛金10,000

仮受金は出所不明の入金の際に用いられます。該当の不明な入金は、調査を必要としますし、時間もかかってしまうため、バックオフィスの業務負担を増加させてしまいます。そのため仮受金を極力発生させないよう、日ごろから請求情報、顧客の入金情報を共有する仕組みが必要です。仮受金が頻発しないようにしておけば、前受金と混同してしまうリスクを減らすことができます。

2. 売上計上している前受金はないか?

前受金を使用する場合、サービスの提供を行っていないにも関わらず、売上計上をしてしまわないよう注意しましょう。売上が実現していない分を誤って売上に計上してしまうと、当期の収益が過大に計上されるため、法人税や所得税の納税額が増加します。

また誤りが発覚した後の修正にも手間を割かれます。万が一、年次決算を締め切り、納税額が確定した後で誤りが発覚すると、決算数値の遡及訂正が必要になるだけではなく、税金計算もやり直しになってしまいます。

このように影響が大きい重要な科目ですので、日ごろから正確に管理をする必要があります。前受金を取り崩すタイミング・基準が曖昧なままでは運用できないので、まずは自社の売上計上基準をよく確認し、明確にしておくことが重要です。必要であれば監査法人や顧問の会計士と相談しましょう。

そして、そのルールに沿って運用をするために、部門間で正しく情報伝達される仕組みが必要です。顧客ごとの契約情報や請求情報を、漏れなく、正確に社内で共有しましょう。どの部分のサービスが完了しているか=売上がどれだけ実現したか?を明確な基準で把握する必要があります。

また、前受金を一つの切り口として、顧客ごと・サービスごとの入金状況や収支状況を社内で共有することで、市場戦略や営業戦略に有効活用することができるかもしれません。情報の一元管理と可視化は、経理部門だけではなく会社全体の生産性向上に貢献できます。

3. 監査対応

前受金は、重要性や金額の多寡にもよりますが、監査法人に詳しく調べられる可能性の高い科目です。前述のように売上と相対する勘定であるため、収益を左右する重要な科目とみなされる場合があります。

実際に、本年度の売上予算が過達だった(余裕をもって達成できた)ので、今期末は一部の売上を前受金のままにしておき、次期以降にとっておくという不正の事例があります。逆に売上が実現していない前受金を売上に計上し、売上を過大計上するというリスクもあるため、詳細な監査の対象になり得ます。

監査にスムーズに対応するためには、計上プロセスを明確にしておき、関係するエビデンス(証憑)をすぐに参照できる形で保存しておくことが必要です。また各顧客ごとの前受金残高や売上実績を適切に管理しておきましょう。前受金の取り崩し額と売上金額、また契約金額に整合性がとれているか、日常的にチェックできる仕組みを構築することが重要になってきます。

4. 貸借対照表での表示

前受金は、貸借対照表において負債の項目に表示されます。金銭を受け取ったことに対して物品の受け渡しやサービスの履行義務があるからです。なお、日常的な営業サイクルの中で発生する科目のため、正常営業循環基準が適用され、流動負債の部に表示されます。

前受収益も通常は流動負債になりますが、決算日の翌日から起算して1年を超える期間で収益化されるものは固定負債となります。決算整理時には前受収益の実現する期日(売上が認識される日)を合わせて確認しておきましょう。なお、固定負債となる前受収益は「長期前受収益」などの科目で表示します。

参考資料

企業会計基準委員会 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等の公表

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