サブスクリプションビジネスの収益管理「ACV(年間契約金額)」とは

サブスクリプションビジネスの収益管理「ACV(年間契約金額)」とは

会計ルールの収益認識のタイミングと実際のキャッシュの動きは異なることはよく知られたお話です。これはサブスクリプションビジネスでも同様にズレが生じてしまうため、この管理がややこしくなってしまいます。今回はこの差異を解消するための年間契約金額を用いたP/L管理(損益管理)についてお話していきます。

損益計算書(P/L)の落とし穴

具体的な例で説明していきます。

A社はサブスクリプションビジネスを新規展開しています。契約と費用、ビジネスの状況や今後の展望は

  1. 月額60万円
  2. 3ヶ月契約, キャンセル不可、新規契約時または更新時に代金を受け取る
  3. 人件費や経費といった費用は毎月130万円発生
  4. 4月から6月の3ヶ月間に毎月1件ずつの案件を成約している

となっています。表にあらわすとこのような収益構造となります。
(7月以降はすべての契約が更新されているものとします。)

4月5月6月7月8月9月
契約件数123333
売上60万円120万円180万円180万円180万円180万円
費用130万円130万円130万円130万円130万円130万円
利益70万円10万円50万円50万円50万円50万円
前受金120万円240万円360万円360万円360万円360万円

特に注目して頂きたいのは「売上」です。

4月は月額60万円×3ヶ月、総額180万円の契約を締結していますが、実際に4月の売上として計上されるのは60万円です。5~6月に売上が計上される残りの金額120万円は前受金として計上されています。会計ルールでは至って当たり前のことです。

しかしながら4月のP/L管理では利益がマイナス70万円と赤字になっています。5月も同様の理由から10万円の赤字となっています。ただし4月は180万円の入金を受けているので、130万円の費用を支払っても50万円のキャッシュが残ります。

これが会計ルールの収益認識のタイミングと実際のキャッシュの動きに差異が生まれる損益計算書の落とし穴です。

事業継続の判断は?

事業経営者の観点では、この損益計算書の落とし穴は非常に注意が必要です。以下の表をご覧ください。先ほどの月次損益表の4月時点の抜粋です。

4月5月6月7月
契約件数1
売上60万円
費用130万円
利益70万円
前受金120万円

この4月時点での月次損益表では、70万円の赤字であることが際立ってしまっています。この時点で「いきなり70万円の赤字を出してしまっているが、この事業を継続して良いのだろうか?」判断に迫られます。皆さんはどのように決断をするでしょうか?

そして事業継続をし、5月時点の月次損益表が出来上がります。

4月5月6月7月
契約件数12
売上60万円120万円
費用130万円130万円
利益70万円10万円
前受金120万円240万円

さて、5月は10万円の赤字で4~5月の合計赤字は80万円です。

赤字幅は減少しましたが、2ヶ月連続で赤字となってしまっています。この時点でも「2ヶ月連続で合計80万円の赤字を出してしまっているが、この事業を継続して良いのだろうか?」判断に迫られます。皆さんはどのように決断をするでしょうか?

損益計算書を予測する

事業継続や投資判断をする時には、「この先どのようになるのか?」を予測する必要があります。下の表は5月までの実績と6~7月の目標契約数に基づいた予測です。A社の例では、まず月額60万円の契約であり、3社と契約が実現する6月の予測損益計算書が出来上がります。そして4月に契約した得意先とは、7月以降も継続して契約すると仮定します。そうすると以下の7月時点の予測損益が出来上がります。6月以降は毎月50万円の黒字化を果たすことができるようです。

4月5月6月7月
契約件数1233
売上60万円120万円180万円180万円
費用130万円130万円130万円130万円
利益70万円10万円50万円50万円
前受金120万円240万円360万円360万円

年間契約金額から考える収益予測

このような悩みを解決するサブスクリプションビジネスのビジネス指標としてACV(年間契約金額)があります。ACVとはAnnual Contract Valueの略で、顧客が1年間(12か月間)に支払う合計の金額のことを言います。契約の年間の価値や規模を計る指標であり、他の顧客との比較や推移による成長を見たりすることができます。月額等定期的に決まって発生する金額に加えて、初期費用や一度だけのサービスの料金なども含むことになります。

A社の例に戻ると、A社は4月から6月までの3ヶ月間に3社との契約を実現し、契約更新することを前提に事業予測します。各社のACV(年間契約金額)は、

4月契約得意先720万円
5月契約得意先660万円
6月契約得意先600万円
合計1,980万円

となります。表にあらわすと以下の通りとなります。

4月契約得意先720万円
5月契約得意先660万円
6月契約得意先600万円
年間売上合計1,980万円
年間費用1,560万円
年間利益420万円

A社が新規展開するサブスクリプションビジネスでは初年度に年間420万円の利益を出すことができることが予測できました。4月や5月時点では赤字となり事業継続の判断に悩まされましたが、ACV(年間契約金額)を用いることにより、より事業の見通しを立てやすくなりました。

終わりに

いかがでしたか?損益計算書(P/L)の管理は、過去の実績のみばかりでなく、これからどう数字が計上されていくのか予測することも、事業判断や成功に必要不可欠な要素です。

そしてACV(年間契約金額)から得意先がどれだけの売上を計上させることができるのかを考えてみると良いでしょう。


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