サブスクリプションビジネスのARR(年間経常収益)とは

サブスクリプションビジネスのARR(年間経常収益)とは

サブスクリプションビジネスは、会員である顧客から月単位・年契約等の定期的な収益を長期間に渡って獲得することを目指しています。ARR(年間経常収益:Annual Recurring Revenue)は既存の顧客から継続的に得られる収益のうち1年間分を表します。

ARRは主要KPIの1つ

ARRは収益を測定する指標として極めて重要で、損益計算書の「総売上高」に相当します。ARRは年度比較をすることで、事業の成長度を測る指標にもなります。

ARRはまた、他の主要KPIである「解約率(Churn)」、および顧客の生涯収益の最大化「LTV(Life Time Value)」と密接に関わります。解約率が低ければ多くの顧客基盤の拡大と収益安定化につながり、顧客満足度が高くなれば次年度以降の契約継続、更なる収益機会に恵まれる可能性が高まり顧客の生涯収益が向上します。

定期収益を前提としたARRでは、アップセル(より高価な契約への切り替え)、クロスセル(他のオプションプランの購入など)があることでARRをより押し上げる効果があり、ダウンセル(廉価契約への切り替え)はARRを押し下げます。

期中に顧客の解約が相次いだとしても既存顧客へのアップセル営業等により結果としてARRが向上するように見える場合がありますので留意が必要です。

ARRと損益計算書の収益認識

ARRはサブスクリプション契約顧客からもたらされる1年間の収益ですので、例えばある顧客A社が2年間契約で総額48,000円を前払いとした場合のARRは24,000円です。顧客B社が同じ契約を24回払いで(毎月2,000円で)支払った場合でもARRは24,000円です。

ただし、実務上多くの場合は総契約金額を日割りまたは月割りをして、そのサービス提供期間(年度ごと)に収益金額を割り当てる計算が必要になります。仮にA社が2年間の契約をしたのが8月で、サービス提供企業の決算月が毎年12月の場合のARRは、初年度(8月から12月までの5か月間)は10,000円、次年度は24,000円、最終年度(1月から7月まで)は14,000円になります。

なお、月単位のサービス契約の場合、顧客は短期間で容易に解約をすることができるため(例えば契約から30日後など)、ARRよりもMRR(Monthly Recurring Revenue)が用いられます。その場合ARRを12分割することでMRRとして見ることも可能です。

ARR(年間経常収益)が目指すこと

顧客の維持と顧客毎の収益最大化がARRの目的です。

そのためには、顧客の成長とともに、提供するサービスの質も価格も変更していくことが重要です。

Zuoraの場合は、顧客のサービス満足度とサブスクリプションの提供価格との相関を図で例示しています。有料顧客(Active User)のうち、契約価格が高い場合には利用期間が短くなり、提供価格が低くなるにつれて利用期間が長期化します。どれくらいの価格が最も収益の最大化になるのかを見極めることがとても重要です。

ARR(年間経常収益)と損益計算書

「SaaS創業者向けスタートアップガイド(Salesforce)」で説明しているサブスクリプションビジネスの損益計算書からARRの位置づけを見てみましょう。

まず、顧客の継続を前提とした「年間経常利益(解約数を考慮しない場合の総収益)」から「チャーン(解約数に応じた逸失収益分)」を差引いて正味のARRを表示しています。

そして正味ARRから年間の費用を差し引いて当期の純利益を求めています。

次に、正味ARRに当期の新規顧客がもたらす翌期の期待収益「新ACV」を加算し、「期末ARR」を求めています。「期末ARR」は再び翌期の損益計算書の「年間経常利益」になります。これにより翌期の総収益がいくらになるのか事前に予測できるようになります。

この損益計算書ではまた、ARRがどのコストに使われているのかを明確にしています。既存顧客の維持コストは「経常利益」の区分に、新規顧客の獲得コストは「純利益」の区分に表示されます。どれくらいのコストを配分すればいいかは「成長効率性指標(GEI)」が参考になり、「新規獲得コスト(営業・マーケティング費)÷新ACV」が1以下であれば収益性の効率性が高い(少ないコストでより高い収益を獲得)、としています。

ARRが安定的に純利益をもたらす規模になると、株主還元の一環で配当の増加や自己株式の買受け等により、株式市場における企業価値の向上を図ることが可能です。

出典:Salesforce 「SaaS創業者向けスタートアップガイド」

ARRの実例 Adobeの場合

サブスクリプションビジネスの成功例として有名なAdobeを見てみましょう。

AdobeはPhotoshop(フォトショップ)とIllustrator(イラストレーター)をサブスクリプションで提供しています。サービス開始からわずか3か月間で464,000件を獲得、その後2,300,000件にまで拡大(Zuoraより抜粋)しました。2018年のAdobe MAXでは、売り切り型のパッケージソフト時代のユーザー数が数百万から、今では数千万の規模になったと説明しています(Business Insiderより抜粋)。

2019FYのサブスクリプション収入は99.9億ドルで全売上高の89%、前年度の79.2憶ドルから26%の増収となりました。このサブスクリプション収入をセグメント別に見ると、特に目立つのはDigital Experienceセグメントの伸張で、2018FY後半に買収したMarketo社とMagento社が貢献していることです。Adobeは両社の買収により、B2Bマーケティング領域の開拓、Eコマース分野の拡充により様々な顧客が求むサービスを幅広く提供することでARRの最大化を実現しています。


出典:Adobe Form 10K(2019FY)

参考資料


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