2020年の電子帳簿保存法改正で経理担当者が知っておくべきポイント

長い間紙による重要書類の保管を義務付けていた行政機関が電子データの利用による業務効率化に向けて動いています。近年は国税に関する書類保存に係る「電子帳簿保存法」が特に注目されています。

この電子帳簿保存法は、1998年に制定されてからいくつもの改正を経てきました。2005年の「e-文書法」施行により紙をスキャンしたデータも電子データとして認められ、2015年の改正では、領収書の電子データ化は「3万円未満に限定する」としていた条件を撤廃、さらに電子署名の要件も緩和されました。続く2016年の改正ではスマホで撮影した領収書等でも電子データとして保存が認められました。

さて、2020年10月の改正では利用者側の使いやすさを向上させるための2つの大きな変更点があります。1つ目は「電子データの保存方法の緩和」。もう1つはクラウドサービス利用時の取引明細データを請求書や領収書として認めたことです。これによりキャッシュレス決済(クレジットカード、交通系ICカード、QRコード等)時の紙の領収書が不要になります。

この改正は社員の経費精算の作業負担を減らすだけではなく、経理担当者にとっても紙とデータの照合が不要になることで業務の合理化に繋がると予想されています。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法の趣旨は「納税者の国税関係帳簿書類の保存に係る負担の軽減等を図るために、その電磁的記録等による保存等を容認しようとするもの(国税庁Q&Aより)」です。

つまり、国税に関係する帳簿書類や領収書等は原則として「紙」で保存することになっているものの、電子帳簿保存法の適用を受ければ「紙」の保存に代えて、紙をスマホ等でスキャンした「電子データ」や、以下のような「電子取引データ」による保存でも例外として認める制度です。

  1. クラウドサービスを利用した電子請求書や電子領収書
  2. 電子メールに添付された請求書や領収書等のPDFファイル等
  3. インターネット上でダウンロードしたPDFファイル等
  4. クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマホのアプリ(QRコード等)で決済したデータ等を活用したクラウドサービス(改正後)

電子帳簿保存法の利用には事前申請が必要

前述の「国税に関係する帳簿書類や領収書等」とは、「帳簿書類」「決算書類」「取引書類」に区分され、それぞれについて利用する日の3か月前までに所轄の税務署へ「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」を申請する必要があります。

(1)帳簿書類総勘定元帳、仕訳帳、売上帳、売掛金元帳等
(2)決算書類決算書、棚卸表等
(3)取引書類領収書、契約書、見積書、請求書等

なお、「(3)取引書類」のうち、スマホのアプリ決済やクラウドサービスを利用した場合の「電子取引データ」に関しては、税務署長の承認は不要となっています。

なお申請にあたっては企業側で電子データを適切に事務処理できることも要件とされています。中小企業の場合は顧問税理士に依頼することで以下の1.と2.は省略可能です。

  1. 相互に関連する各事務について相互に牽制されていること。
  2. 事務処理が適切であることを確認するための定期的な検査体制及び手続きがあること。
  3. 事務処理に不備があった場合は、再発防止体制が講じられていること。

また紙をスマホ等でスキャンして電子データ化することに関しても、以下の要件がありますので留意してください。

  1. 電子データのスキャン時期を通常は領収書を受領してから7営業日以内、最長でも2か月以内。
  2. スキャンする際のスマホのカメラ解像度は386万画素(解像度 200dpi)以上。(例えばiPhone 4以降(500万画素/背面カメラ)であれば大丈夫です。)

2020年の電子帳簿法改正で変更される点

今回の2020年の電子帳簿法改正の目的は、PDF等の電子データで請求書や領収書を受領した場合の保存方法の緩和と、クラウド等で電子取引を行った場合の電子データの保存要件の新設です。

電子データ(電磁的記録)を受け取った場合の保存要件の緩和

前述のとおり、電子帳簿保存法では電子取引を行った取引情報(請求書や領収等)について電磁的に記録を保存することが義務付けられています。

改正前のデータ保存要件では、PDF等の電子データを「受領した側」でもタイムスタンプを付与するか、あるいは社内規定としてデータの改ざん防止等のための「事務処理規定」の作成と運用が求められていました。

今回の改正は、データ保存の「要件」を緩和することと、新たにクラウド等の利用によるデータの保存を認めるとしました。

電子帳簿保存法改正で新たに認められる2つの保存方法

2017年度の国税庁統計データでは、約20万社が電子帳簿保存法の適用を受け、2016年度からの増加は1万2千件となり当時の改正が寄与したものと推察されますが、総務省統計局のデータと比較すると2016年度の国内の従業者数5名以上企業は約226万社となっており、電子帳簿保存法の浸透はなんと1%にも満たない水準でした。多くの企業では未だに「紙」による保存によっています。

その背景として、電子データ受領時のタイムスタンプの付与のための投資負担を敬遠して電子帳簿保存法の適用を見送っていたことが予想されます。

そこで2020年の電子帳簿保存法改正では利用者の負担を減らすことで、電子データの活用、ペーパーレス化の推進しようという狙いがあります。これにより今後は多くの企業が電子帳簿保存法の適用に向けて動き出すと思われます。

では新たに認められる2つの保存方法について詳しく見てみましょう。

(1)発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録を受領した場合において、その電磁的記録を保存する方法

今回の改正により、発行者側が請求書等にタイムスタンプを付していれば、受領者側でタイムスタンプの取得が不要になります。タイムスタンプとは文書がいつの時点で存在していたのかを電子的に証明する仕組みで、実務上は電子データを第三者機関(「一般財団法人日本データ通信協会」)が認定する業者のシステムやクラウドサービスを利用することが一般的です。

(2)「電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム」を利用しての保存

従来はクラウド等を利用していても必要に応じて電子取引明細データにタイムスタンプを付して保存しなければならない等の不都合がありました。例えばデータを印刷しスキャンして電子データ化するか、電子データをダウンロードして、それらにタイムスタンプを付すことで電子帳簿保存法の要件を満たしていました。

今回の改正により、データの受領者側でデータ改変ができないクラウド等を利用している場合は、その電子取引明細をそのまま保存できるようになります。

軽減税率の経理業務の簡略化について

軽減税率とは、2019年10月の消費税増税について一部の商品は引き続き従来の8%税率に据え置く制度です。また、消費税法の仕入税額控除の適用を受けようとする事業者は、紙もしくは電子データでの保存が必要です。

2023年10月からは「インボイス制度が導入」され、仕入税額控除の厳格化が予定されています。請求書をもらった側が、請求書を発行した事業者が消費税の「適格請求書発行事業者」であることを国税庁のホームページで都度確認しなければならず、その手間が膨大になります。

この手間を削減するにはやはりクラウド事業者のサービスを活用することが望まれます。クラウド事業者側で膨大な数の「適格請求書発行事業者」がデータベース化され、請求書データをそれらと自動的に照合する仕組みがあれば、経理担当者はその確認作業を省略できるようになります。

利用中または導入予定の会計システムの会計システムの対応状況を確認しておこう

自社で利用している会計システムや、今後利用する予定の選定中の会計システムがある場合は、新たに認められたシステムに対応している・または対応予定があるかを確認しておくとゆとりを持って業務設計ができるでしょう。

まずはシステム・ソフトウェアの取扱説明書等で電子帳簿保存法の要件を満たしているか確認しましょう。あるいは公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(以下「JIIMA」)が認証したものかどうかによっても確認することができます。

次に、領収書等の電子化を社内に定着させるには、システム等法令要件を満たすだけではなく社内の業務プロセスを変更・改善していくために以下のような周知活動も大切になります。

  1. 紙による申請から電子データ申請に代わることで、現場からは使い方や変更の理由等様々な質問が経理部門に寄せられますのでQ&Aのような説明資料を用意しましょう。さらに電子化プロジェクトとして取締役会レベルでの承認を事前に得ておくことで社内関係者から電子化への疑問の声は少なくなります。
  2. 電子化によりどれくらいのコストメリットがあるかを、現場だけではなく全社レベルの観点から説明できるようになりましょう。
    費用の削減効果……経理部門への郵送費用、原本の保管費用、検証費用
    工数の削減効果……申請者の精算作業、上長の承認作業
  3. 経費精算にあたり普段の移動費用を交通系カードで決済し、会議や接待など飲食費用はコーポレートカードやQRコード決済を使うことで、経費精算作業の大部分が省略されるメリットを理解してもらいましょう。

参考資料


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